建築設計ってなにをやるの?
どんな仕事なの?
この記事では、こういった質問にお答えします。
「建築設計という名前は聞いたことあるけど、実際の仕事はどんな内容なんだろう?」
確かに私も建築業界で働く前までは、全然わかりませんでした。
筆者が色々な現場で働いた経験を踏まえて詳しく解説していきたいと思います。
建築設計とは
建築設計の種類
読んで字の如く、建物を設計するお仕事です。
そんなの知っているでござる!
しかし、建物と言っても小さな小屋から、大きな病院や高層マンションなど色々な建物があります。
大きな建物となれば全て一人で設計するには無理があります。
そこで、建物を設計するうえで、それぞれ役割分担が決まっているのです。
それがこの3つです。
- 意匠設計
- 構造設計
- 設備設計
意匠設計
意匠とは一言でいうと「デザイン」。
意匠設計は、主に建築の外観や部屋の間取り等の内部のデザインをする仕事です。
大抵は「建築設計」と言うと、この意匠設計の事を指すことがほとんどです。
そして本記事ではこの意匠設計についてメインで取り上げていきます。
拙者の家の壁には、プリキュアを描いて欲しいでござる!
構造設計
構造設計とは、建物の重量を支える土台や柱、梁といった建築物の骨組みに関わる部分を設計する仕事です。
地震などの自然災害に耐えうる頑丈な建物を建てる為に構造計算を行い、必要な骨組みの太さや、数を設計していきます。
拙者の部屋は漫画だらけで床が抜けそうなので、頑丈にして欲しいでござる!
詳細はこちらをご覧ください。
設備設計
設備設計とは、簡単に言えば、上下水道、ガス、冷暖房、照明、コンセント、インターネットなどの建物に必要な設備の設計を行う仕事です。
台所にはガスや水道を通したり、照明の種類や明るさを決めたり、部屋毎の要望を聞き取り必要な設備を設計していきます。
ぐふふw拙者の部屋にはインターネットをお願いするでござる!
詳細はこちらをご覧ください。
建築設計の仕事内容
では、実際に建築設計(意匠設計)とはどんな流れで、どのような人と関わりながら仕事をしていくのでしょうか。
実際の仕事をがどのような流れで行われていくのか、イメージが付きやすいように具体的に記載してみました。
ここでは規模の小さい一般的な住宅ではなく、比較的大きな病院をテーマに解説してみましょう。
以下のようなシチュエーションを考えてみました。
あなたは「オタク建築設計事務所」で1級建築士として働いています。
今回あなたの会社が「東京都発注の病院新築設計業務案件」の入札に競り勝ち、「秋葉原オタク病院」の設計を任されることになりました。
そしてあなたがその病院の設計担当者です。
名前は拙者丸(せっしゃまる)です。
自分のことを拙者と呼ぶので皆に拙者丸と呼ばれています。
このような立場を想像しながら読んでみてください。
仕事の流れ
拙者丸さん、1番に東京都庁建築係の担当者よりお電話入ってます。
今セーラームーンを見てる最中でござる。
後にして欲しいでござる。
初めての打ち合わせ
東京都の病院担当者から連絡が入りました。
初めての打ち合わせの場所と時間の連絡です。
このような打ち合わせが行われます。
- 顔合わせ(名刺配りと自己紹介)
- 都庁担当者から各設計担当事務所と担当者の紹介
- 都庁担当者から建物の概要、設計工期、建築予定期間の説明など
今回の新しく建てる病院の設計は「東京都庁発注」のお仕事です。
そのため草案はある程度東京都庁の建築係で考えられています。
その説明を初回打ち合わせで聞くことになるでしょう。
大規模な建物の設計は1か月程度で終わるものではありません。
1年以上かかる場合もあります。
今後1年以上連携を取りながら一緒に仕事をしていく構造設計事務所、設備設計事務所、都庁担当者、新築の病院で働く先生たちとのファーストコンタクトがここで行われるのです。
そして、あなたはこの打ち合わせ内容を事務所に持ち帰り、一緒に仕事をしていく会社の仲間に説明したり、役割、作業スケジュールを考えるのです。
よーし、スケジュールも組んだし次は現地を見に行くぞー!みんなお弁当とカメラを持って出発でござる!
現地調査
なにをするにもまずは現地調査です。
どんな場所に建てるのか、周りにはどんな建物があるのか、目で見てみなくてはイメージも思いつきません。
そして後で見直せるようカメラで撮影しまくるのです。
- 建築予定地に関する調査
- 周りの道路や建物との距離、日当たり
- 地盤の測定など
ここで重要なことは、周りとの位置関係。
病院を建てたことにより、周りへの影響が少なからず出ます。
それは、日当たりの問題であったり、騒音の問題、緊急車両の出入りの問題。
様々な問題を想定して、建物を建てる位置を決めていくのです。
現地調査も終わったし、帰って基本計画を考えるでござる!
基本設計
打ち合わせの結果と、現地調査を踏まえて基本計画を練っていきます。
不明な点は都度、都庁担当者や、病院関係者に聞き取りをおこないながら基本設計書にまとめていきます。
- 基本設計図(平面、立面、パース)を作成
- 工事費概算を算出
- 実施設計(詳細設計)のスケジュール作成
- ざっくりとした工事スケジュールの作成
基本設計では、ざっくりとした計画をまとめた基本設計書を作成します。
ここで重要なポイントは、利用する人(今回は病院関係者)の要望に沿った設計になっているかどうかです。
そして、その計画が予算金額に沿ったものかどうか。
また、実施設計期間はどれくらいなのか、工事期間はどれくらい掛かるのか。
などを盛り込んだ基本設計書を作成して、改めて打ち合わせを行うのです。
ざっくりと出来たから一度会議を開いて打ち合わせでござる!拙者丸の自信作でござる!
構造、設備設計事務所と打ち合わせ
基本設計書を作成するうえで構造と設備の構想を盛り込んだ設計書を作成する必要があります。
意匠ばかり気にしていては必要な設備が設置できなかったり、耐震構造上問題のある建物になってしまいます。
それぞれが協力して3者の要望を取り入れながら基本設計書をまとめる必要があります。
- 設備設計の配置要望を取り入れる
- 構造設計の骨組みを意匠に取り入れる
ここで重要なポイントは、お互いの要望を取り入れながら3者の納得する形で設計書を作成することです。
そして、その取り纏めをするのは建築設計(意匠設計)担当者の仕事です。
構造設計と設備設計の基本設計案と概算金額をひとつの設計書にまとめて基本設計書の完成となります。
みんなの意見を取り入れて基本設計書が完成したでござるよ!
実施設計
基本設計書の作成が終わったら、次は実施設計の工程へと進みます。
実施設計では基本設計で考えた計画を更に細分化していき、部屋の窓の高さをミリレベルで決めていくような細かい作業を積み重ねていきます。
- 屋根や外壁の材質等の細かい指定
- 窓の位置、部屋の入口、物の配置を図面に落とし込む
- 配置図、平面図、立面図、断面図など作成
実施設計で重要なポイントは基本設計よりも更に密に連携して作業を進める必要があるということです。
基本的に、建築設計(意匠設計)が決まらなければ設備の配置も構造も決めることができません。実施設計においても建築設計主導で設計を進めていく必要があります。
例えば、一度周知した図面を自分勝手に変えてしまうと、設備、構造は変更された図面に合わせて修正する必要が出てくるのです。
それゆえに上記で説明した「構造、設備設計事務所と打ち合わせ」は実施設計においても大変重要であり、三者間の密な連携が必要となるのです。
ホウレンソウは大事でござる!
よーし!これで実施設計完了でござる!
施工監理
実施設計が終わった後は実際に工事をする施工期間となります。
建築設計と言っても設計だけするのではなく、工事を監理する施工監理という業務が待っています。
施工業者が決まり、施工会社の現場代理人と打ち合わせをしながら施工を見守ることとなります。
(現場代理人とはその現場の責任者です)
- 現場代理人との打ち合わせ
- 工事の定例会議への参加
- 工事が安全かつ円滑に進むか監理をする
施工監理で大事なことは、工事を安全に進めているかどうかをチェックする事。そして現場代理人からの質問事項に迅速に対応してあげられるかどうかです。
工事をしていれば多かれ少なかれ絶対に問題が発生します。
設計図がおかしくて物が収まらないという場合もあれば、作業員が怪我をしたりしてしまう危険も考えられます。
そのような問題や事故に対して迅速に対応できるかどうかが求められるのです。
最後にお役所や、消防などの諸官庁の検査が入り晴れて建物が完成となります。
ふぅ~。
大変だったけどいい建物が出来たでござる!
やりがい
以上、大規模な建物を想定した建築設計の一連の流れを解説してきましたがいかがでしょうか。
大半の方が大変だと思ったのではないでしょうか?
確かにとても責任のある大変なお仕事ではあります。
ただ、想像してみてください。
自分が設計した建物が完成した時の達成感を。
建物の近くを通るたびに人に自慢できるのです。
「あの建物はわたしが設計した建物だよ」
それが彼女なのか、子供なのかはわかりませんが凄いと思わない人がいるでしょうか?
人に誇れる仕事であるのは間違いありません。
建築士になるには
どうすれば建築設計の仕事に就くことが出来るの?
建築設計の仕事に就く場合は特に必要な資格はありません。
筆者自身も特に専門の学校を出たわけではないですし、資格を保有していたわけでもありませんでしたので、応募さえあれば働ける職業ではあります。
ですが一般的には、建築系の学科のある大学や、専門学校で学んだ後に建築事務所などの現場で経験を積むという流れが多いのではないでしょうか。
建築士の資格は必ずしも必要ではありませんが、資格を保有していなければ任せてもらえない役割があります。
企業によっても募集条件に資格が必要な所や、中途採用の場合などは
特に、資格保有者が優遇される場合も多いのは確かです。
資格を保有していないからと言ってあきらめる必要はなく、就職した後に実務経験を積みながら資格取得を目指すのが良いでしょう。
必要な資格と能力について、例えば次のようなものがあります。
必要な資格と能力
やはり一番有名なのは一級建築士です。これさえ保有していれば建造物の規模に関係なく、色々な建物を設計することが可能です。
オリンピックの国立競技場を設計することも夢ではありません。
その他の資格についてはコチラをご覧ください。
・パソコンを使える
・Word、Excelで諸官庁提出書類や、打合せ資料を作成
・PowerPointでプレゼン資料の作成
・CADで図面を作成
・コミュニケーション能力
ほとんどの仕事をパソコンで行います。
Word、Excel、PowerPointは使えたほうがもちろんよいでしょう。
CADに関しては、設計事務所によって導入しているCADが違います。
CADの操作はすぐに覚えられると思いますので、概念さえ把握しておけばよいでしょう。
そして、人との関りがとても多いので最低限のコミュニケーション能力は必要となります。
給与について
建築設計に携わる人の年収はおよそ250万~1000万程度が相場です。
その中でも図面を描く専門のCADオペレーターの年収は比較的低めといって良いでしょう。
やはり一級建築士のような資格取得も大変で、責任のある立場ほど年収は高くなりますし、事務所を一人で構えてお仕事をすればその分収入もUPします。
少しでも年収UPを目指したいのであれば、資格を取得することをオススメ致します。
まとめ
建築設計の魅力はやはり達成感です。
建築現場において建築設計は他を主導するリーダー的な存在であり、人が生きていく上でなければならない職業といって良いでしょう。
昨今人工知能による自動化が進んではいるものの、この設計分野においては施主との打ち合わせを行ってそれを形にするという作業が必要になります。
これらを自動化することは簡単ではなく、まだまだ無くなるものではありません。
経験上確かにきつい仕事ではありますが、やりがいという面では十分にあります。
建物を設計していると人から聞けば単純に「凄い」と思ってしまいませんか?
それが答えだと思います。
それほど社会的に認められた、人間と縁深い職業なのではないかと思います。
補足
建築設計(意匠、構造、設備)は誰がどこまで担当するかは、計画されている建物の規模や、会社の規模による事が多いです。
例えば、一般住宅を販売している工務店であれば意匠、構造、設備の設計全て一人で行う事もありますし、病院や構想マンションであれば各個人が担当する設計区分はもっと細分化されることが多いです。
そして、今回基本設計、実施設計、施工監理と一連のながれを説明しましたが、これらは別発注になることも多く全てに携われない場合もあります。
基本設計だけとか、実施設計と施工監理とかケースバイケースとなります。