建築設備士ってどんな資格なの?
資格を持っていると何ができるの?
このような質問にお答えします。
平成27年建築士法改正があり、建築設備士の必要性は徐々に高まってきています。
今一度この記事を読んで建築設備士とはどのようなものか一緒に確認していきましょう。
建築設備士とは
建築設備士とは一体何なのか?
まずは建築士法の定義を見てみましょう。
建築士法では以下のように定義されています。
「建築設備士」とは、建築設備に関する知識及び技能につき国土交通大臣が定める資格を有する者をいう。
建築士法 第2条 (定義)
簡単に説明すると、「建築設備士」は建築設備(空調や給排水等)の設計・工事監理におけるスペシャリストであり、国にきちんと認められた国家資格だという事です。
なるほどでござる。
設備専門の国家資格なのでござるな。
そして、建築士法には他にもこのような記載があります。
建築士は、延べ面積が二千平方メートルを超える建築物の建築設備に係る設計又は工事監理を行う場合においては、建築設備士の意見を聴くよう努めなければならない。
建築士法 第18条 (設計及び工事監理)
この条文は平成27年の6月のに改正されたもので、年々建築設備士の必要性は高まってきているのです。
では、建築設備士とは具体的にどのような仕事内容なのでしょうか。
建築設備士の仕事内容についてはこちらの記事がおすすめです。
建築設備士は、普段より建築設備設計や工事監理を行っている人たちが目指す資格であり、この資格を取得する事によって様々なメリットがあります。
建築設備士にはどんなメリットがあるでござるか?
建築設備士取得のメリット
建築設備士を取得すると以下のようなメリットがあります。
建築士試験の受験資格
建築設備士は令和2年の法改正により、一級建築士、二級建築士及び木造建築士については、実務経験なしで受験可能となりました。
ただし、試験合格後の免許交付には実務経験4年以上が必要となりますので注意が必要です。
一級・二級・木造建築士についてはこちらの記事をご覧ください。
・一級建築士とは?合格率や取得難易度について
・二級建築士とは?受験資格と合格率
・木造建築士とは?一級・二級との違いや受験資格・難易度について
設備設計一級建築士講習の受講が可能
建築設備士として5年以上の実務経験に加えて一級建築士を取得した方は、「設備設計一級建築士」の講習・修了考査を受ける事が可能となります。
また、講習・修了考査における「建築設備に関する科目・設計製図」が免除となります。
設備設計一級建築士になるには、原則として一級建築士として5年以上設備設計の業務に従事した後、国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が行う講習の課程を修了することとされております。
ですが、建築設備士として5年の実務経験を積み1級建築士の資格を取得すれば、この「登録講習機関が行う講習」に受講可能となり、設備設計一級建築士になる事ができるのです。
登録建築設備検査員講習の受講資格
建築設備(換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水設備及び排水設備)の安全確保のためには定期検査を行い、その結果を特定行政庁へ報告する必要があります。
その定期検査を行うことができる資格を有する方を「建築設備検査員」といいます。
そして、その「建築設備検査員」になる為には、国土交通大臣の登録を受けた機関が実施する「登録建築設備検査員講習」を受講し、修了考査に合格する必要があります。
建築設備士を取得するとこの「登録建築設備検査員講習」を受講する事が可能となります。
電気工事・管工事の専任・主任技術者
建設業許可を受けるためには営業所に専任技術者がいる必要があります。
また、建設業許可を受けた業者は、元請・下請等や、請負金額に関わらず現場に主任技術者を配置しなければなりません。
建築設備士を取得すると、1年の実務経験で電気工事、管工事の一般建設業における営業所の専任技術者・工事現場の主任技術者となることができます。
登録適合性判定員講習の受講資格
平成29年4月に建築物省エネ法の建築物エネルギー消費基準への適合性判定の制度が施行されたました。
非住宅部分の床面積が2000㎡以上の建築物を新築等する場合は、その建築確認に際し、所管行政庁又は登録省エネ判定機関による省エネ適合性判定(建築物エネルギー消費性能適合性判定)を受ける必要があります。
そして、「建築設備士」は、この適合判定員となる為の登録適合性判定員講習受講資格が与えられます。
業務競争参加資格審査の加点
公共工事等では適正な施工を確保するために、工事等の規模及び内容に応じて、必要な技術的能力を有する建設業者等を選定して工事等を発注する必要があります。
そしてこれらの工事を受注する建設業者等を選定するため、入札参加資格審査を行なっています。
その審査対象となる資格として「建築設備士」が掲げられており、有資格者数の点数算定では一級建築士と同様に5点が付与されています。
その他
- 登録防火設備検査員講習の受講資格
- 登録昇降機等検査員講習の受講資格
- 防火対象物点検資格者講習の受講資格(実務経験必要)
これらの他にも小さなメリットがいくつも存在します。
メリットだらけでござるな。
ぜひ受験資格について知りたいでござる。
建築設備士の受験資格
では、この建築設備士の資格を取得するにはどのような受験資格が必要となるのかを確認しましょう。
学歴及び資格 | 実務経験 |
---|---|
四年制大学の建築・機械・電気卒業 | 2年以上 |
短期大学、高等専門学校、旧専門学校の建築・機械・電気卒業 | 4年以上 |
高等学校、旧中学校の建築・機械・電気卒業 | 6年以上 |
一級建築士 | 2年以上 |
1級電気工事施工管理技士 | 2年以上 |
1級管工事施工管理技士 | 2年以上 |
空気調和・衛生工学会設備士 | 2年以上 |
電気主任技術者(第1種、第2種又は第3種) | 2年以上 |
実務経験のみ | 9年以上 |
試験の合格率や難易度
建築設備士の試験は第一次試験[学科]と第二次試験[設計製図]があり、それぞれ基準点以上で合格する必要があります。
一次試験内容:建築一般知識、建築法規及び建築設備
- 建築一般知識 30問(合格基準点 12点以上 40%)
- 建築法規 20問(合格基準点 10点以上 50%)
- 建築設備 50問(合格基準点 25点以上 50%)
- 合計 100問(合格基準点 60点以上 60%)
全て5択問題で、試験時間は建築一般知識・建築法規が3時間、建築設備が3時間の計6時間。
各課目及び合計点が全て合格基準点以上で合格となります。
二次試験内容:建築設備基本計画及び建築設備基本設計製図
- 建築設備基本計画(記述)
- 建築設備基本設計(空調・換気設備、給排水衛生設備、電気設備より1部門選択)
試験時間は5時間半。
令和2年度より一次・二次試験ともに試験の内容に少し変更があります。令和2年度より受験される方は気にする必要はありませんが、以前より受験されている方は注意が必要です。
二次試験の内容は以下のように毎年テーマが異なります。
実施年 | 「第二次試験」(設計製図)の課題 |
---|---|
平成27年 | 図書館と屋内プールのある複合施設 |
平成28年 | 店舗を併設した本社事務所ビル |
平成29年 | 湖畔に建つホテル |
平成30年 | 小都市に建つ市庁舎 |
令和元年 | スポーツクラブのある複合商業施設 |
試験は一次試験が6月頃、二次試験が8月頃となっており、一次試験(学科)の合格者は翌年に限り一次試験の受験が免除されます。
建築設備士の合格率
建築設備士の合格率は、学科試験で27%~32%、製図試験で52~56%、総合で18%~20%となっています。(平成27年~令和元年のデータ)
一次 実受験者数 | 一次 合格者数 | 一次 合格率 | 二次 実受験者数 | 二次 合格者数 | 二次 合格率 | 総合実受験者数 | 総合合格者数 | 総合合格率 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
平成27年 | 2,589 | 831 | 32.1% | 1,061 | 554 | 52.2% | 2,862 | 554 | 19.4% |
平成28年 | 2,677 | 737 | 27.5% | 1,071 | 601 | 56.1% | 3,046 | 601 | 19.7% |
平成29年 | 2,907 | 841 | 28.9% | 1,112 | 580 | 52.2% | 3,205 | 580 | 18.1% |
平成30年 | 2,983 | 930 | 31.2% | 1,242 | 646 | 52.0% | 3,335 | 646 | 19.4% |
令和元年 | 2,800 | 749 | 26.8% | 1,123 | 610 | 54.3% | 3,198 | 610 | 19.1% |
合格率は二級建築士よりも少し低く、それなりに難易度の高い試験と言っていいでしょう。
一次試験の学科では建築設備だけではなく、建築の一般知識や、建築基準法などの法律の問題もあるので、設備関連の業務に携わっている方は建築一般と法規の問題を重点的に勉強するとよいでしょう。
法規の問題は建築設備関連法令集を見ながら回答して良いことになっています。
一次試験対策はひたすら過去問に取り組み、二次試験の対策は講習会が開催されているのでそちらに参加する事をオススメします。
ちなみに(最新)令和二年度の一次試験(2020年 6月21日)の結果は以下の通りです。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|
2,526人 | 650人 | 25.7% |
試験地
試験地は札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪府、広島市、福岡市及び沖縄県となります。
※ 沖縄県については、「第一次試験」(学科)のみの実施となります。
また、沖縄県で「第一次試験」(学科)を受けた受験者については、原則として、「第二次試験」(設計製図)の試験地が福岡市となりますのでご注意ください。
建築設備士を取得するとお給料はUPするでござるか?
建築設備士の年収
建築設備士の年収は300万~700万程度が相場となります。
正直建築設備士は取得メリットは非常に多いですが、資格取得による収入のメリットはさほど感じられないかもしれません。
もちろん企業によっては資格手当を支給してくれるところもあります。
ですが意匠設計などと同じく、設備設計も資格がなければ設計できないという事はありません。
むしろ私の周りのベテランは建築設備士を持っていない方が大半で、それでも大規模な建築物の設計・監理に携わっています。
当ブログでは何度も申し上げているように、資格と収入は直結しない部分が多いのが事実です。
じゃあ、取らなくてもいいんじゃない?
と思ってしまいますが決してそうではありません。
その理由は次のまとめに記載しています。
まとめ
現在の建設業界は慢性的な人手不足に陥っており、高齢化も重なってより有資格者の確保が必要になってくる時代です。
設備業界でもここ数年で建築設備士という言葉を良く耳にするようになってきました。
設計・監理業務を受注する際や、入札に参加する際にこの建築設備士を抱えている企業は非常に有利になるため、企業にとって人材の確保が急務と言えるでしょう。
企業単位ではなく個人で考えた場合も同じく、そもそもが人手不足なため有資格者を早急に必要としている企業は星の数ほどあり、就職・転職などにも大変有利になってきます。
現在の建築設備士の立ち位置は、建築士に対して、建築設備の設計・工事監理に関するアドバイスを行える立場として位置付けられています。
何が言いたいのかというと、建築設備士でなければ設計できないという法律はなく、正直建築設備士が関与しなくても、建物を造ることは可能なのです。
じゃあ、転職しなければ取得してもメリットはないのか?と問われればノーです。
有資格者としての位置付けは低いかもしれませんが、前述の通り建築設備士を取得した際に受けられるメリットは非常にたくさんあります。
そのメリットというのは次の自身のキャリアアップに繋がる(優遇される)という点です。
特に建築士の受験資格と、設備設計一級建築士講習への受講資格が挙げられるでしょう。
収入についても一級建築士と設備設計一級建築士を所持していれば話は変わってきます。確実に年収アップを望めるでしょう。
就職・転職を考えている方はもちろん、自身の今後のキャリアアップ、収入アップを考えている方は取得して損はなく、設備設計1級建築士を目指している方は5年の実務経験が必要になるので早急に取得するべき資格と言えるでしょう。