資格

消防設備士とは?受験資格や合格率について

消防設備士について知りたい人

消防設備士ってどんな資格?
資格を持っていると何ができるの?

このような質問にお答えします。

この記事を読んでわかる事
  1. 消防設備士の概要
  2. 消防設備士の受験資格
  3. 消防設備士の合格率や難易度
  4. 消防設備士のメリット
  5. 消防設備士の年収

消防設備士とは

消防設備士とは消防設備の設置工事や整備点検を行うことができる国家資格です。

では、消防設備とは一体どのようなものがあるのでしょうか。

消防設備の種類
  1. 消火設備
    • 消火器
    • 屋内・屋外消火栓
    • スプリンクラー
  2. 警報設備
    • 自動火災報知器
    • 漏電火災警報器
  3. 避難設備
    • 避難はしご
    • 誘導灯

これら消防設備は建築物で火災が発生した場合に人命を守る為に非常に重要な役割を果たします。

そのため、消防設備の整備点検は誰がやっても良いわけではなく、国に認められた資格が必要となるのです。

その資格が「消防設備士」となります。


消防設備士にはいくつか種類が存在し、それぞれ扱える消防設備も異なってきます。

消防設備士の種類

消防設備士は大きく分けて2つに分類されます。

それが甲種(こうしゅ)乙種(おつしゅ)です。

甲種

消防用設備等の工事、整備及び点検をすることができる

乙種

消防用設備等の整備及び点検をすることができる
甲種と違い工事は出来ない

甲種は乙種と違い工事が可能なので、「甲種は乙種の上位資格」という認識で問題ありません。

そして、甲種・乙種の中にもいくつか種類が存在します。

甲種

第1類~第5類までは甲乙共通です。
特類に関しては甲種のみとなります。

分類工事整備対象設備等
第1類屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、屋外消火栓設、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備、共同住宅用スプリンクラー設備
第2類泡消火設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備
第3類不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備
第4類自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備、共同住宅用自動火災報知設備、住戸用自動火災報知設備、特定小規模施設用自動火災報知設備、複合型居住施設用自動火災報知設備
第5類金属製避難はしご、救助袋、緩降機
特類特殊消防用設備等
(従来の消防用設備等に代わり、総務大臣が当該消防用設備等と同等以上の性能があると認定した設備等)
乙種

第1類~第5類までは甲乙共通です。
第6類、第7類に関しては乙種のみとなります。

分類工事整備対象設備等
第1類甲種と同じ
第2類甲種と同じ
第3類甲種と同じ
第4類甲種と同じ
第5類甲種と同じ
第6類消火器
第7類漏電火災警報器

甲種に第6類と第7類がないのは、消火器はホームセンターなどで購入し、設置については他のものと比べ容易にでき、漏電火災警報器はこれを設置できるのは電気工事士のみだからです。

ただし、整備・点検についてはきちんと行われていないと危ないため乙種が存在します。

このように甲種と乙種では工事が出来るか出来ないかで大きく異なる為、試験の受験資格も異なります。

消防設備士の受験資格

乙種の受験資格

乙種には受験資格がないため誰でも受験が可能です。

甲種の受験資格

甲種の受験資格は以下となります。

実務経験や資格による受験資格

対象者資格内容
甲種消防設備士
(試験の一部免除有)
受験する類以外の甲種消防設備士免状の交付を受けている者
乙種消防設備士乙種消防設備士免状の交付を受けた後2年以上、工事整備対象設備等の整備(消防法17条の5の規定に基づく政令で定められたもの)の経験を有する者
技術士
(試験の一部免除有)
技術士法第4条第1項による技術士第2次試験に合格された者
※試験の一部免除がされる類は技術士の部門により限定されます。
電気工事士
(試験の一部免除有)
1.電気工事士法第2条第4項に規定する電気工事士免状の交付を受けている者2.電気工事士法施行規則による旧電気工事技術者検定合格証明書の所持者で電気工事士免状の交付を受けているとみなされる者
電気主任技術者
(試験の一部免除有)
電気事業法第44条第1項に規定する第1種、第2種又は第3種電気主任技術者免状の交付を受けている者
工事の補助5年消防用設備等の工事の補助者として、5年以上の実務経験を有する者
専門学校卒業程度検定試験合格者専門学校卒業程度検定試験規程による専門学校卒業程度検定試験の機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する部門の試験に合格された者
管工事施工管理技士建設業法第27条の規定による管工事施工管理の種目に係わる1級又は2級の技術検定に合格された者
工業高校の教員等教育職員免許法により、高等学校の工業の教科について普通免許状を有する者(旧教員免許令による教員免許状所有者で、教職員免許法施行法第1条により工業の教科について教員免許状を有するとみなされた者を含みます。)
無線従事者電波法第41条の規定により無線従事者資格(アマチュア無線技士を除く。)の免許を受けている者
建築士建築士法第2条に規定する1級建築士又は2級建築士
配管技能士職業能力開発促進法第62条(旧職業訓練法第66条)の規定による配管の職種に係わる1級又は2級の試験に合格された者(1級又は2級配管技能士)
ガス主任技術者ガス事業法第32条の規定によるガス主任技術者免状の交付を受けている者(第4類消防設備士の受験に限る。)
給水装置工事主任技術者水道法第25条の5の規定による給水装置工事主任技術者免状の交付を受けている者
旧給水責任技術者水道法第25条の5(平成9年4月1日施行)制定以前の地者公共団体の水道条例又はこれに基づく規定による給水責任技術者(給水装置技術者その他類似の名称のものも同一の資格と見なされます。)の資格を有する者
消防行政3年消防行政に関わる事務のうち、消防用設備等に関する事務について3年以上の実務経験を有する者(消防機関又は市町村役場等の行政機関の職員が対象となります。)
実務経験3年消防法施行規則の一部を改正する省令の施行前(昭和41年4月21日以前)において、消防用設備等の工事について3年以上の実務経験を有する者
旧消防設備士昭和41年10月1日前の東京都火災予防条例による消防設備士の者

学歴による受験資格

対象者資格内容
大学、短期大学又は高等専門学校
(5年制)の卒業者
学校教育法による大学、短期大学、又は高等専門学校(5年制)において機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する学科又は課程を修めて卒業された方
高等学校及び中等教育学校の卒業者
(旧制の中等学校卒業者の方も含みます。)
学校教育法による高等学校及び中等教育学校又は旧中等学校令による中等学校において機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する学科又は課程を修めて卒業された方
ただし、指定されている学科名の中に、該当するものがない場合は、機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する授業科目を8単位以上修めて卒業されたことを単位修得証明書で確認を受ける必要があります。
旧制の大学及び専門学校等の卒業者旧大学令による大学又は旧専門学校令による専門学校において機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する学科又は課程を修めて卒業された方
ただし、指定されている学科名の中に、該当するものがない場合は、機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する授業科目を15単位以上修めて卒業されたことを単位修得証明書で確認を受ける必要があります。
外国の学校の卒業者外国に所在する学校で、日本における大学、短期大学、高等専門学校又は高等学校に相当するもので、指定した学科と同内容の学科又は課程を修めて卒業された方
大学、短期大学、高等専門学校
(5年制)又は専修学校の15単位修得者
学校教育法による大学、短期大学、高等専門学校(5年制)又は専修学校において機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する授業科目を、大学にあっては大学設置基準、短期大学にあっては短期大学設置基準、高等専門学校にあっては高等専門学校設置基準及び専修学校においては専修学校設置基準による単位を15単位以上修得された方
各種学校の15単位修得者学校教育法による各種学校において機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する授業科目を講義については15時間、実習については30時間、実験、実習及び実技については45時間の授業をもってそれぞれ1単位として15単位以上修得された方
大学、短期大学又は高等専門学校
(5年制)の専攻科の15単位修得者
学校教育法による大学、短期大学及び高等専門学校(5年制)の専攻科において、機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する授業科目を15単位以上修得された方(単位の換算方法は「各種学校」と同様です。)
防衛大学校又は防衛医科大学校の15単位修得者防衛庁設置法による防衛大学校及び防衛医科大学校において機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する授業科目を15単位以上修得された方(単位の換算方法は「各種学校」と同様です。)
職業能力開発総合大学校、
職業能力開発大学校及び
職業能力開発短期大学校又は
職業訓練大学校又は
職業訓練短期大学校
若しくは中央職業訓練所の15単位修得者
職業能力開発促進法又は職業訓練法(旧職業訓練法を含みます。)による職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校、職業訓練大学校又は職業訓練短期大学校若しくは雇用対策法による改正前の職業訓練法による中央職業訓練所において機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する授業科目を15単位以上修得された方(単位の換算方法は「各種学校」と同様です。)
 ただし、指定されている学科名称の中に、該当する学科名がある場合は、卒業証明書又は卒業証書で確認を受けることができます。
水産大学校の15単位修得者農林水産省組織令による水産大学校(昭和59年7月1日前の農林水産省設置法による水産大学校を含みます。)において機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する授業科目を15単位以上修得された方(単位の換算方法は「各種学校」と同様です。)
海上保安大学校の15単位取得者運輸省組織令による海上保安大学校(昭和59年7月1日前の海上保安庁法による海上保安大学校を含みます。)において機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する授業科目を15単位以上修得された方(単位の換算方法は「各種学校」と同様です。)
気象大学校の15単位取得者運輸省組織令による気象大学校(昭和59年7月1日前の運輸省設置法による気象大学校を含みます。)において、機械、電気、工業化学、土木又は建築に関する授業科目を15単位以上修得された方(単位の換算方法は「各種学校」と同様です。)
博士、修士学校教育法第104条に基づき、大学又は国立学校設置法第3章の5に規定する学位授与機構により授与された、理学、工学、農学又は薬学のいずれかに相当する専攻分野の名称を付記された修士又は博士の学位(外国において授与されたこれらに相当する学位も含まれます。)を有する方

試験の合格率や難易度

甲種合格率

甲種の合格率は以下となります。

年度特類1類2類3類4類5類合計
令和2年度合格率11.1%37.5%27.3%44.4%43.1%16.7%39.8%
令和元年度合格率19.6%28.5%41.1%41.1%36.7%38.7%35.8%

乙種合格率

乙種の合格率は以下となります。

年度1類2類3類4類5類6類7類合計
令和2年度合格率25.0%57.1%0%17.7%0%45.4%61.9%43.9%
令和元年度合格率32.6%41.5%30.4%39.9%40.8%42.3%64.944.0%

消防設備士取得のメリット

消防設備士の合格率は、甲種では特類をのぞいてみれば平均30%前後、乙種では平均40%前後となっていますのでそれほど難しい試験ではありません。

もちろん分類にもよりますが、しっかり勉強さえすれば合格できるでしょう。

まず消防設備のメンテナンス会社への就職・転職が有利となります。

受験資格がそこまで高くない資格ですので、資格手当を受けられるかどうかは会社によりますが、ないよりあったほうがいいのはもちろんです。

実際に求人情報を見てみると、消防設備士を優遇してくれるところは多いです。

そして、消防設備士の資格を取得すると以下の資格の受講資格を得ることができます

  • 防火管理技能者
  • 消防設備点検資格者

甲種消防設備士としての実務経験が5年以上ある場合は以下の資格の受講資格を得ることが出来ます。

  • 特殊建築物等調査資格者

建設業許可に必要な技術者として認められます。

  • 消防施設工事業の建設業許可に必要な専任技術者及び主任技術者

これらの資格を取得するための第一歩としては丁度良いですし、建築設計、施工に携わっている方は必ず消防設備は付きまといますので、特に何の資格も持っていない方は、消防設備の勉強にもなるので挑戦してみると良いでしょう。

消防設備士の年収

消防設備士の年収は300万円~500万円程が相場と言われています。

もちろん、地域や、年齢、会社、保有資格の分類に大きく左右されます。

資格取得が簡単な分類であれば有資格者も多いため、消防設備士の中でも大きく分かれるところではありますが、資格取得難易度のわりに得られる収入は多いように感じます。

そして、消防設備に関しては人間の生活に密着しており、防災上欠かすことが出来ない為これからも安定した収入を得ることが出来るでしょう。

皆さんが通われていた学校にも屋内消火栓があり、定期点検を必ず行わなければいけません。

こうイメージしてみると、この職業の需要は今後も安定的なものだと考えられます。

まとめ

乙種は受験資格がなく、希望すれば誰でも受験することが可能です。

そのため、未経験でも、消防設備士として活躍したい方はご自身の性別や学歴などに関係なく挑戦してみることをおすすめします。

乙種合格後は実務で経験を積みながら、甲種の取得を目指すと良いでしょう。

消防設備士は、防災設備の点検・工事を行う事が出来る資格です。

そして、建築物には消防設備設置の義務があり、この定期点検・整備は必ず行わなければいけないものです。

「お金がないから今年は消防設備の点検はやめようかな」と避けて通れるものではありませんので、景気に左右されづらい安定した職業であると言えます。

そして、人命を守るために非常に責任のある仕事でもあります。

人命に関る責任のある仕事であれば、それだけ給料も多く上がりやすいと考えてよいでしょう。

建築設計に携わっている方々においても、消防設備についての知識を深掘りするには良い資格ですので是非挑戦してみることをおすすめします。