資格

構造設計一級建築士とは?受験資格や合格率について

構造設計一級建築士を知りたい人

構造設計一級建築士はどんな資格?
資格を持っていると何ができるの?

このような質問にお答えします。

構造設計一級建築士」は平成18年12月改正の建築士法により創設された比較的新しい制度になります。

この記事では構造設計におけるスペシャリストである「構造設計一級建築士」について解説いたします。

構造設計一級建築士とは

構造設計一級建築士とは一体何なのか?

まずは建築士法を確認してみましょう。

分かりやすいように一部省略していますが、建築士法では以下のように定義されております。

一級建築士として5年以上構造設計の業務に従事した後、定められた講習の課程を修了した一級建築士

一定規模以上の建築物の構造設計を行う場合においては、構造設計一級建築士が自ら設計を行うか、構造設計一級建築士以外の一級建築士が構造設計を行う場合には、構造設計一級建築士に法適合確認を受ける必要がある

ここでの一定規模以上の建築物とは以下のような建築物を指します。

  • 高さが13mまたは軒の高さが9mを超える木造の建築物
  • 地階を除く階数が4以上の鉄骨造の建築物
  • 高さが20mを超える鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物
  • その他政令で定めるもの

要するに、ある一定以上の規模の建物を建てる場合は、構造設計一級建築士が必要だという事です。ここが一級建築士との大きな違いでもあります。

構造設計一級建築士は一級建築士よりも上位に位置付けされる構造設計におけるスペシャリストです。

構造設計の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

構造設計ってなにをやるの?仕事の内容は?建築設計の中でも構造設計のお仕事の内容を詳しく解説します。どんな仕事をするのか。お給料はどれくらいか?このような質問にお答えします。...

構造設計一級建築士取得のメリット

一級建築士の有資格者は現在37万人程と言われていますが、構造設計一級建築士は1万人程度といわれています。

弁護士ですら4万人ちょっとです。

このことからも既に貴重な資格であることがお判りになるかと思います。

構造設計一級建築士の資格がなくとも、あなたの勤めている会社に資格者が一人いればその人の責任の範囲で案件を受注する事が可能であり、設計にも携わる事が出来ます。

その為、構造設計を行う上で必ず必要という資格なわけではありませんが、逆に考えると構造設計一級建築士を持ってさえすればその立場にもなり得るという事です。

資格取得の手当ても付くでしょうし、お給料のアップもあるでしょう。

そして、転職などにも非常に有利になり、有資格者を優遇してくれる企業は多いでしょう。

構造設計一級建築士の受験資格

受講資格

一級建築士」として5年以上の構造設計の業務経験を有する者。業務経験には構造設計の業務のほか、次の①~③の業務内容も含まれます。

  1. 構造設計に関する工事監理の業務
  2. 建築確認の構造に関する審査及びその補助業務
  3. 構造計算適合性判定及びその補助業務

構造に関する工事監理の補助業務及び構造設計の補助業務については、平成25年9月まで携わっていたものは業務経験として認められますが、平成25年10月以降に携わったものは業務経験として認められません。

また、下記の業務については実務経験として認められませんので注意が必要です。

認められない実務経験
  • 構造以外の設計(意匠設計、設備設計等)
  • 構造以外の工事監理
  • 積算
  • 施工・施工管理
  • 研究・教育
  • 行政(確認申請の審査業務、構造計算適合性判定業務を除く。)
  • 土木関係の業務
  • 都市計画関係の業務
  • 環境等の業務
  • 構造計算プログラム作成業務
拙者丸

自分の実務経験が認められるかはキチンと確認するでござる。

構造設計一級建築士講習について

講習は、テキストを使用した 2 日間の講義と 1 日の修了考査の構成により実施します。

受講すべき講義の一部でも欠席した場合は、修了考査を受けることができません。

講習内容

講義 1日目

時間内容
10:00~11:00(1時間)構造設計総論(建築構造設計のあるべき姿)
11:00~13:00(2時間)構造設計総論(荷重・外力と建築物の応答)
14:00~18:00(4時間)構造関係法令及び法適合確認

講義 2日目

時間内容
10:00~11:20(1時間20分)構造設計の基礎
11:20~12:00(40分)耐震診断・耐震補強
13:00~16:00(3時間)構造設計各論

終了考査

時間内容
10:00~13:00(3時間)法適合確認
14:15~17:15(3時間)構造設計

講習地及び講習期間

講習開催地

札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡

講習及び修了考査開催日

講習:9月中旬~10月上旬
修了考査:11月上旬

試験の合格率や難易度

過去5年間の受講者数と合格率は以下のようになっています。

平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度令和元年度
申込区分Ⅰ
実受講者数
667627624681602
申込区分Ⅰ
修了者数
182131122229146
申込区分Ⅰ
修了率
27.3%20.9%19.6%33.6%24.3%
申込区分Ⅱ
実受講者数
105143877446
申込区分Ⅱ
修了者数
3245336116
申込区分Ⅱ
修了率
30.5%31.5%37.9%82.4%34.8%
申込区分Ⅲ
実受講者数
74588476121
申込区分Ⅲ
修了者数
2523594653
申込区分Ⅲ
修了率
33.8%39.7%70.2%60.5%43.8%
旧申込区分IV
実受講者数
00202
旧申込区分IV
修了者数
00202
旧申込区分IV
修了率
100%100%
合計
実受講者数
846828794831771
合計
修了者数
239199216336217
合計
修了率
28.3%24.0%27.2%40.4%28.1%

講習受講における申し込み区分は下記の3種類があります。

  • 申込区分Ⅰ:全科目受講
  • 申込区分Ⅱ:法適合確認のみ受講
  • 申込区分Ⅲ:構造設計のみ受講
  • 旧申込区分IV:講義の一部・修了考査免除者

構造設計一級建築士の修了考査においては、設備設計一級建築士のように「建築設備士」資格を所有していれば修了考査の一部を免除できるという優遇措置は特に用意されていません。(細かい話を言えばありますがレアなので)

ですので、日頃より構造設計を業務として行っている方も、意匠設計がメインの方も最初は必ず申込区分Ⅰから受講する事となります。

構造設計を主としてお仕事をされている方からすれば、特別な対策を講じなくても講習の内容を把握していれば問題なく合格できるでしょう。

そうでない方でも、「法適合確認」もしくは「構造設計」どちらかもで修了すれば翌年度は免除となりますので、1度落ちたからと言って諦めるのではなく数年掛けて取得することをおすすめします。

構造設計一級建築士は、建築士法により3年ごとの定期講習が義務付けられます。

構造設計一級建築士の年収

構造設計一級建築士の年収は600万円~1000万円程が相場と言われています。

建築設計に携わっている方々の中で言えば、確実に上位に食い込める収入を得られるでしょう。

求人情報を見ても高収入な募集が多い様です。

設計事務所を立ち上げるもよし、資格取得の為のスクールを開くもよし、この資格を取得した実績さえあれば自分次第で様々な稼ぎ方が見つけられるでしょう。

まとめ

普段より構造設計に携わっている方からすれば特別難易度の高い試験ではありませんので、受講条件を満たしている方はドンドン挑戦してみましょう。

そうでない方は、実務作業で構造設計をこなしながら、数年時間を掛けてじっくりと取得する事をおすすめします。

そもそも建築業界は多忙なため、資格取得のお勉強に充てる時間のある人などほんの一握りです。

それくらい実務に追われ忙しくしている方であれば、沢山の人に必要とされ、別に資格がなくても仕事をこなせていることと思います。

ですが、さらなるキャリアアップ、収入アップを目指している方、ロマンを追い求める方は是非ともこの構造設計一級建築士を目指してみてください。

ハードルは非常に高いですが「千里の道も一歩から」。

コツコツと知識を積み重ねればおのずと結果は付いて来るでしょう。